北畠親房(今谷明 訳)「現代語訳 神皇正統記」 KADOKAWA(文庫/新人物文庫)

南北朝時代南朝の公卿、北畠親房の記した歴史書。 神代から後村上天皇まで天皇の代毎に記述し、それぞれについてを北畠親房の考える正理に基づいた批評をしている。 史書としては、時代や立場を考えれば仕方ない面もあるが、不正確な部分が散見されるし、肝心の「正理」がブレている所もある。 後醍醐天皇のような主君に使え、南朝の屋台骨とも言える立場ながら、本人の思想である「正理」を貫こうとする難しい部分も読み取れなくもない。 また、やや時代が異なるが同じ貴族の書いた「玉葉」や「愚管抄」と比べると歴史的な見識について疑問はあるが、読み物としては中々面白かった。 一方向からだけでなく、色々な立場からの見方と言う物を養うために、色々な史書や日記に目を通し続けて行きたいものである。