三津田信三「首無の如き祟るもの」 講談社(文庫/講談社文庫)

奥多摩の旧家に受け継がれる儀式の最中、首なしの死体が発見される。犯人と目される当主の長男は忽然と姿を消した。旧家を代々祟ると言う怨念が見え隠れする中、次の殺人が…と言う話。
刀城言耶シリーズの第2作目か3作目。地方の旧家、代々続く因習、祟られる因縁、跡目を争う一族ときて、首無し死体と人間消失と、道具立てがいかにも古典的な本格推理ものであるが、色々な変化球を織り交ぜている。正直な所、些か反則では?と思う所もあるし、凝った道具立てが凝り過ぎて却って伝奇風のおどろおどろした雰囲気を打ち消して、かつ推理をしやすくしてしまっている気がする。登場人物の多くは「出てるだけ」と言う感じで重みがないのは残念。代々の因習と言う雰囲気を出すにはステレオタイプに過ぎる。素材は良いのだが、もう少し整理して雰囲気を出したら夜読むととても恐ろしくて面白い伝奇推理小説になったのではなかろうか。色々文句をいいつつも割と楽しめた作品ではあり、それだけにもう少し「料理」してくれればな、と思った。