R.クーリー「ウロボロスの古写本」上・下巻 早川書房(文庫/ハヤカワ文庫NV)

レバノンで遺跡調査中の考古学者イヴリンが拉致された。彼女には表紙に「ウロボロス」が記された古い写本の買い取り依頼が入っていた。イヴリンの娘、ミアはアメリカ大使館員のコーベンとともに母の行方を追い始めるが…と言う話。
前作「テンプル騎士団の古文書」と同じく、現代と過去がオーバラップと言うか行ったり来たりする展開で、恐るべき秘密の隠された古写本を巡る冒険アクション小説である。「TVドラマ的」と言うかドラマの素材としては悪くないと思うけれど、思わせ振りなアイテムが多い割には衒学的な愉しみが少ないのが難点。と言うか、そもそもそこまで驚くような秘密だったか?と言うのが率直な感想である。
筋は割と明快で…アクションものだから…すらすら読めるけれど、正直オチは微妙。もう一捻りあっても良い気が。登場人物では遺伝学者の筈なのに錬金術と科学の関連の歴史を全く知らないヒロインに首をひねりつつ、取り敢えずうざいと思った。前作のヒロインよりはマシだけど。一方、男共は前作よりバックボーンとか秘密とか野望とかが出てくるようになってずっと良くなっていると思う。
移動中や休日の気分転換に読むには良いと思うが、文庫本で二冊も使うならもう少しひねったモノにしてほしいな、と思った。