太田忠司「玄武塔事件」 東京創元社(文庫/創元推理文庫)

少年探偵・狩野俊介シリーズ長編第四弾。アキは二人の友人と共に玄武屋敷を訪れる。そこは友人の一人紫織の伯父の屋敷だが、名前の由来ともなたt玄武塔で不可思議な殺人と人間消失事件が起こる。アキは紫織への嫌疑を晴らす為、石神探偵事務所所長の野上と俊介に助けを求めるのだが…と言う話。
作者の癖と言うか、この作品の色と言うか、少年探偵である狩野俊介は時として「重い」話になるのだが、今回は途中まで出てこない「通りすがりの探偵さん」の気配すらあるせいか、その部分は緩和されて話として読みやすくなっている。トリックや道具立て、人間関係も前三作よりはすっきりした形になっており、解説の有栖川有栖の述べるように、「本格」の「練習曲」として良く出来ていると思う。変にひねた所が無く、すっきりとした悪くない作品だと思う。