落合淳思「古代中国の虚像と実像」 講談社(新書/講談社現代新書)

筆者は甲骨文研究の人のようで、その方面から述べている最初の章(夏王朝のの実在とか)については面白く読んだ。しかし次の章以降は甲骨文に関係なくなったせいか「史記」をあげつらっているだけにも読める。確かに「史記」の資料的価値を盲信するのは危ういが、状況証拠「だけ」を連ねて「と考えられる」「であるはずがない」を連発されると些か辟易する。
研究書ではなく、新書なのでそこまで肩肘張らずに楽しめば良い、とも思ったが、それくらいなら陳舜臣の「中国の歴史」でも読んだ方が面白い。
前述のように筆者の得意分野であろう、甲骨文を用いる分には悪くないので、「夏王朝」とかに絞り、その面での「虚像と実像」の対比をした方が面白いのではないか、と思った。