読んだ本

ごろごろしながら、積読を消化。

辻真先「日本・マラソン列車殺人号」 光文社(文庫/光文社文庫)

日本・マラソン列車殺人号 (光文社文庫)

日本・マラソン列車殺人号 (光文社文庫)

三良旅行社最後の企画、九州から北海道までの在来線を乗り継ぐ「日本マラソン列車」に父である瓜生慎の代理で参加する事になった瓜生竜。一方、旅行社の債権者の死体が発見され、慎に探偵役が回って来て…と言う話。
「テツ」大好きな作者が「これでもか」とばかりに「テツ」ネタとトリックを盛り込んでくる「瓜生慎・真由子」のシリーズであるが、いよいよ最終巻。 80に手が届こうという作者は相変わらず元気に見えるが、流石に取材等がきつくなったのかもしれない。「テツ」らしいトリッキーな作品がまた減るのかと思うとさびしい限り。無理ないペースで作品を出してくれるといいな、と思う。

三田誠レンタルマギカ 争乱の魔法使いたち」 角川書店(文庫/角川スニーカー文庫)

<アストラル>を審判とする<協会>と<螺旋なる蛇>の<大魔法決闘>が開始される。いつきの示す勝利条件を満たすため、双方が動き始める。一方、前社長、伊庭司は独自に動き始め…と言う話。
いよいよ「終わりの始まり」と言う感じの<大魔法決闘>開始。一見、無謀とも思える「勝利条件」も、これまで積み上げてきたものが成果として表れているのが面白い。ただし相手がどいつもこいつも倫理など気にしない性格の歪んだ連中なので当面はピンチが続きそう。ある種「ジョーカー」である司の存在がどのくらい引っ掻き回すのかも興味深い。だらだら続けられると興ざめとなりそうなので、いい感じに盛り上げて上手く締めてほしい所である。

阿刀田高 編「リアル怪談傑作選」 光文社(文庫/光文社文庫)

光文社文庫にて発行されている読者投稿怪談「奇妙にこわい話」シリーズの傑作選。編者が「奇妙な味わい」の短編の名手、阿刀田高と言う事で期待して読んでみた。最初の「私のあしおと」はいい感じで「こわい」話で続きも愉しみになったが、基本的には多少「奇妙な味わい」がないでもないが、怪談としては「これ怪談か?」と思わせるような話が多い。それでも語りが良ければ怖くなるのかもしれないが、どれも文章がきれいにまとまり過ぎていて、却って怖さをスポイルしている気がした。「実話」に拘ってないと言う事らしいので、ある意味「現実味」がないのも弱点ではないかと思った。

林家志弦はやて×ブレード」14巻 集英社(B6/ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

はやて×ブレード 14 (ヤングジャンプコミックス)

はやて×ブレード 14 (ヤングジャンプコミックス)

天地学園存続を賭けた頂上決戦、ひつぎ・静久vs.玲・紗枝がついに決着。流石に前巻よりはギャグも「重い」感じになっており、色々な「想い」が交錯した話になっている。とは言え、最後は流石に主役がいつも通りの「バカ」で突っ走るのでちょっと安心。本当の意味での「決着」は次巻になる訳だが、13巻と14巻の間程待たされないようなので安心…していいのかな?

和六里ハル「勇者の娘と出刃包丁」1巻 双葉社(B6/ACTION COMICS)

勇者の娘と出刃包丁(1) (アクションコミックス(コミックハイ!))

勇者の娘と出刃包丁(1) (アクションコミックス(コミックハイ!))

魔族との戦いから16年。「伝説の勇者」の娘、りんくは勇者である父を復活させる為に旅に出るがそれにどうしようもないダメ母が付いてきて…と言う話。「ちょいエロ珍道中」と言う事で、実際そういう雰囲気の作品なのだが、「勇者」の秘密やら魔族の復活やら結構真面目な展開もある模様で続きものとして興味が持てる。

深水黎一郎「エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ」 講談社(文庫/講談社文庫)

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

銀座でも有数の画廊、暁画廊の社長が密室で殺害された。不可解な状況挑む捜査員達。その最中、海埜警部補の甥、神泉寺瞬一郎が帰国し…と言う話。
例の某TV局の騒動で名前を見かけ、文章が整然としていて興味を持ったので作品を読んでみた。所謂「新本格」にカテゴライズされる作品であるが、芸術、特に「エコール・ド・パリ」に関する蘊蓄と密室と言う道具立てはしっかり揃っている。変人の素人探偵も「お約束」ではあるが、興味を持った文章のtwitterよりは文章が安定していないような気がした。セリフで使うべき言葉と地の文で使うべき言葉が混然としていたり、素人探偵の存在感が薄かった…捜査本部の警部の方がくどすぎるが存在感はあった…り、まだ「慣れてない」と言う感じを持った。事件の動機や手段と言うのは割と古典的な感じで、それならそれでいいのだが、いっそ「芸術」の方面の蘊蓄の比率を上げてより衒学的な味わいを強めたらより楽しめたのではないかと思った。

吉田戦車「逃避めし」 イースト・プレス(B6)

逃避めし

逃避めし

漫画家の吉田戦車が締め切り間際の「逃避」で作る食事の数々をつづったエッセイ本。作者のエッセイは何作か読んでいるが、食にはこだわりがある作者なので興味深く読んだ。そうそう、何か迫られると逃げたくなるよね。それはそれとして、文章も読みやすいが、挿絵も「らしい」絵ばかりで結構楽しめる。大雑把な作り方は文章にあるが分量とかは特に書いてない。「作ってみようかな」と思っても量くらいは考えろ、と言わんばかりの雰囲気がまた良い。残念ながら仕事場の台所が無くなったそうなので「逃避めし」はお仕舞いとの事だがまたこういう本が出ると楽しいと思う。