今邑彩「少女Aの殺人」 中央公論新社(文庫/中公文庫)

ラジオの深夜番組に投稿された一通の手紙。その内容は名門女子高の生徒による殺人予告とも受け取れる内容だった。果たしてその手紙の内容に一致するともとれる殺人事件が起こり…と言う話。
「少女」の独白的な章と事件の章が交互に進み、それが交わる時真相が明らかになる、と言う形式。普通に読んでいると途中で犯人も動機も分かってしまうのだが、そのあたりから寧ろ犯罪よりも、容疑者ともなっている一組の親子の間の「秘密」が累卵の危機となっている事が明らかになり、犯罪とのリンクでいつそのバランスが崩れてカタストロフが訪れるのかという恐怖が楽しめる作品である。「女怖い」とも思えるけれど、抱え込んだ秘密が明かされる事の恐怖と明かされた事による崩壊と解放、と色々と考える事のある作品であった。