週末読んだ本

週末に東野圭吾の加賀恭一郎シリーズを読んだ。「新参者」のドラマ終わって少々たってしまったが…

東野圭吾「悪意」 講談社(文庫/講談社文庫)

人気作家が殺害された。犯人はすぐに逮捕されたが頑として動機を喋らない。加賀は事件の裏に潜む秘密を探るが…と言う話。
加賀恭一郎シリーズの第三弾。殺害方法についてではなく、「動機」が問題となる作品である。手記や証言等を用いた叙述型のミステリであり、題名の「悪意」からなんとなく「だまし」があるな、と警戒していたので「だまされた!」と言う驚きこそないが、徐々に明らかになる動機に「悪意」が満ちており、そこに至るまでの展開がじわじわ来るというか、上手い構成になっていると思う。加賀が教師を辞めた理由も判明し、シリーズものとしての楽しみもある作品である。

東野圭吾私が彼を殺した」 講談社(文庫/講談社文庫)

作家と詩人の結婚式で作家が死んだ。容疑者は三人。疑心暗鬼と加賀の捜査が始まる…と言う話。
どちらかが彼女を殺した」と同じく作中で犯人が明示されず、読者の推理力に任せられるタイプの小説。容疑者三人の手記(?)が交互に繰り返され、その中から事件の真相を見抜く訳だが最終的に袋とじの解説書をみなければ確認できないというのが少しもどかしい。ただ、それぞれの容疑者の心情がにじみでていて、なかなかスリリングな作品に仕上がっていると思った。

東野圭吾「嘘をもうひとつだけ」 講談社(文庫/講談社文庫)

バレエ団の事務員の転落死の謎を追う加賀恭一郎の推理を描く表題作他4編の短編集。どれも最初の時点で犯人がほぼわかっており、「コロンボ」的な推理ものが集められている。長編の重々しさはないけれど、普通の生活に潜む悲哀と言うか暗部と言うか、そういったものが詰め込まれた作品集であると思う。作品中では加賀の友人が出てくる「友の助言」が珍しい印象の作品だった。

東野圭吾「赤い指」 講談社(文庫/講談社文庫)

庭先に少女の遺体を発見した平凡な家族。事件の真相を隠そうと画策するが…と言う話。
この作品も最初から犯人が分かっていて「コロンボ」的な推理物だが最後の最後でどんでん返しがある。そういった楽しみよりも「普通の家族」に圧し掛かる問題が非常に重くてページをめくる指がともすれば重くなる。加賀の従弟、松宮の登場と加賀の父の病を含めた所で加賀父子の関係も描かれる為、最早「推理小説」と言うより「小説」になっている感じを受けた。普通の家族ゆえの「悪意」と言うか「甘え」と言うかそういう部分と加賀父子の絆とかが鮮やかな対比になっていると思う。