ここ最近読んだもの〜加賀恭一郎シリーズ

ドラマに触発されたのではない…ということもないが、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズをちまちま読んだ。

    東野圭吾「卒業」 講談社(文庫/講談社文庫)

    卒業を控えた女子大生が死んだ。状況から自殺ともみられたが親友の沙都子は納得出来ず、残された日記を手掛かりに真相を探る。そして第二の事件が…と言う話。
    現在「新参者」のドラマが放送されているが、その主人公、加賀恭一郎が刑事になる前の学生時代を描いた小説である。加賀シリーズのエピソード1と言ったところか。もう随分前の作品であり作者初期の作品にあたる。その頃の作品らしく、トリックも凝ったものを使っている上にミステリと言うよりミステリ風味の青春群像劇と言う趣もあるが、トリックべったりの作品よりは小説として読み応えがあった。シリーズものとして、加賀のキャラクターがまだ「若い」と言うあたりも印象的で、後続作品と比べるのもまた一興であろう。それにしても作者の乱歩賞受賞作「放課後」の次の作品(の筈)なので読んでいた筈だが記憶が曖昧である。読んで無かったのかなあ…

    東野圭吾「眠りの森」 講談社(文庫/講談社文庫)

    バレエ団のメンバーが事務所に侵入した男を殺した。正当防衛とも考えられたが、侵入者とバレエ団の接点がない。捜査が進む内、次の事件が…と言う話。
    加賀恭一郎シリーズの第二弾。バレエ、と言うある種の異世界での殺人事件に挑む訳だが、「卒業」より大人になった加賀、と言うシリーズものとしての楽しみもあるが、「放課後」や「卒業」等でみられたトリックよりも、「誰が」「何故」と言う面に小説の焦点がシフトしているようにみられる事が興味深い。一般人には縁のない、それでて華やかで目を引く世界での事件というのはありがちながら魅力的な舞台装置である。それはそれとして加賀父が出番は少ないながらいい味をだしていると思った。

    東野圭吾どちらかが彼女を殺した」 講談社(文庫/講談社文庫)

    あるOLが死んだ。当初自殺と思われたがOLの兄はそうは考えなかった。彼は独自に調査を始め、妹の元恋人と親友の二人に目星をつけた。どちらかが彼女を殺したのだ、と…と言う話。
    加賀恭一郎シリーズの第三弾。非常にトリッキーな作品である。発売当初その結末で話題になった作品で、トリックよりも「Who done it」に力点が置かれた作品とも見えるが、詳細に文章を追うと真犯人が分かる(ように思える)と言う仕掛けが論理パズル的推理小説にもなっている。これがフェアかアンフェアかという部分で割り切れないものを感じなくもないが、小説としてはころころかわる展開が面白くて中々楽しめた。