木原浩勝・中山市朗「新耳袋 現代百物語 全十夜」 角川書店(文庫/角川文庫)

実録怪談の西の雄である「新耳袋」。噂には聞いていたのだがとうとう手を出してしまった。「怪談」と言うのはありがちながら難しい存在で、特に実録系となると「怖い」と言うより「意味不明」となるものが多いので、作者(と言うか蒐集家か?)は苦労したのではなかろうか。良くまとまっていると思うけれど、途中から「怪」「怪」でも「ちょっといい話」的なものが増えて来て、語り口は違うけれど松谷みよ子の「現代民話考」を読んでる気分になる話もあった。実は「怖」の部分を期待していたら肩透かしを食らった気分になるものも多く戸惑ったけれど、実録となるとこうなってしまうものなのかもしれない。まあ楽しめたものも多かったけれど、もう少し古典的な「怪談」に寄ってくれた方が個人的には好みである。