カーター・ディクスン「一角獣の殺人」 東京創元社(文庫/創元推理文庫)

元英国情報部員ケンウッド・ブレイクは情報部員イヴリンとパリで再会した。ちょっとした悪戯心から彼女の任務に同行する事にしたが、行く先々でトラブルに巻き込まれる。そして「一角獣」を巡り、希代の怪盗、フランスの覆面刑事、そしてHMをも巻き込む事件が…と言う話。
ディクスンというかカーというか、ともあれこの作者はトリックにこだわりが有り、所謂「本格」の代表的な雰囲気があるのだが、この「一角獣の殺人」はどちらかと言えば「冒険小説」に近い印象を受けた。二重三重の「だまし」が有る訳だが映像にしたら流石にすぐばれるんじゃないか、と他人事ながら心配になるようなトリックがあり、逆に言えば小説と言う媒体のせいで推理の行ったり来たりは楽しめた。トリックに肩ひじ張らずに登場人物の掛け合いやどんでん返しを愉しむべき作品であろう、と思った。