宮脇俊三「汽車旅12ヵ月」 河出書房新社(文庫/河出文庫)

「時刻表2万キロ」の著者によるエッセイ集である。「時刻表〜」は(当時の)国鉄全線を乗覇した記録エッセイであるが、この本はその時のメモや別の乗車体験を基にして、 1年の月毎の鉄道旅の楽しみを綴ったものとなっている。簡潔で読みやすく、そこかしこにユーモアのある文体は変わらず、つい旅に出たくなるような気分にさせてくれる。今や乗る事の出来ない線も多く、追憶の彼方と言う趣もあるが、それもまた良い。実際には私は「鉄」ではないのでそのような行動力は無いのだが、読書による疑似体験だけでも楽しくなる本である。