西村京太郎「終着駅殺人事件」 光文社(文庫/光文社文庫)

個人的な話をすれば「西村京太郎のトラベルミステリー」で最初に読んだのがこの作品である。それは別にして、昭和56年度日本推理作家協会賞受賞作と言う事もあり西村京太郎のトラベルミステリーの代表作と言えると思う。
青森へ向かう寝台特急ゆうづるで帰郷する同級生たちが次々と不審な死を遂げる、と言う話だが、時刻表トリック・密室その他色々な要素を詰め込んだ盛りだくさんの作品になっている。初期西村作品は色々な仕掛けがあって面白い。実際の所、鉄道に詳しい人はすぐ気付くようなトリックもあり、明らかなミスディレクションと分かる所もあるのだが、「そして誰もいなくなった」ばりに一人また一人殺害され、犯人の動機が不明、と言う展開は初読の際にスリリングな面白さを覚えたものである。
前述のような気になる部分もあり、結果として動機が些か…と言う気がしなくもないが、そういう部分と昔懐かしさを割り引いてみても悪くない作品であると思う。