読んだ本や観たTVとか

風邪であることを幸い(?)に色々と観たり読んだり。

松田治「ローマ建国伝説 ロムルスとレムスの物語」 講談社(文庫/講談社学術文庫)

ローマ建国伝説の双子の話をその経緯や発生過程を含めて解説した本。雌狼の乳で育った王子、ロムルスとレムス。二人は協力し、対立し、そしてローマは作られる。大雑把な流れは知っていましたが、改めて読むと色々な文化や民族の歴史が含まれていてより面白い。讃うべき建国の英雄は同時に非難すべき兄弟殺しである、と言う二律背反を背負わなければならないローマの人々がどのような思いでいるのか。そういう事を考えるとギリシャやそれに先行する文化圏の影響を受けたのは明らかなこの建国伝説がさらに興味深いものになる、と思いました。

横溝正史「山名耕作の不思議な生活」 徳間書店(文庫/徳間文庫)

昭和初期の発表された作者の短編を集めた作品集。横溝正史といえば金田一耕助シリーズを始めとする「家」や「一族」にまつわるおどろおどろしい推理小説が有名ですが、この本に収められているのは犯罪と言うよりもどちらかといえば「奇妙な味わい」の作品ばかりです。横溝正史がこのような作品を書くとは中々以外…いくつかは前に読んだ事がありますが…で、それを割り引いても、昭和初期とは思えない「新鮮さ」がありました。短編は切れ味が命で、どれも中々うまく嵌っていると思いました。しかし「乱歩」の名前で発表されたもののあるとは、昔の文壇はおおらかだったのだな、と。

泡坂妻夫「宝引の辰捕者帳 鳥居の赤兵衛」 文藝春秋(文庫/文春文庫)

幕末の江戸で起こる事件を神田千両町に住む親分、宝引の辰が解く連作集。捕物帳ものは色々ありまして、それぞれの味がありますが、そのフォーマットに沿いつつも泡坂妻夫らしさが良く出ていると思います。不可思議な出来事を淡々と解き明かす。それでいてそれぞれの短編が楽しめる。筆力のある作家が描くと古式床しい「目明し」ものもまだまだ十分楽しめます。

笠井潔「天啓の宴」 東京創元社(文庫/創元推理文庫)

いわゆるメタミステリというやつなのでしょう。この分野にはあまり詳しく無いのですが多重構造の世界観が眩暈を覚えさせてくれるのは夏の気候のせいか。「メタ」な話だとミステリ論が交わされる事が多いような気がしますが、この作品ではどちらかと言うと哲学的な話題が多くて作者らしいなあ、と思いました。

「リング」

公開当時大きな話題になった映画ですが、公開されたのはもう10年近くも前になるのに驚きました。ビデオを見た人が数日後には死ぬ、と言うテーマで中々面白く観せてくれます。ただ、真昼間に放送するものじゃないな、と思いました。こういうのは深夜枠でないと面白さが半減ですね。